分かんない。
離れる心



川上は私の家の
玄関まで送ってくれたけれど、
出迎えた母がひきとめ、
中に入る事になった。
台所でジュースをついだり、
菓子を用意している母に
私は小さな声で話しかけた。

「今日ね。川上のお母さんと
お父さんにお年玉貰ったんだ。
断ったんだけど、
それでも受け取ってって
言ってくれて」

母は怒ったりなどしなかった。

「あら、良かったわねぇ。
私からも川上くんにあげなきゃね。
いい、美佐?
お返しにあげるんじゃなくて、
お正月に来てくれたから
あげるんだからねぇ」

そう言うと母は
誰かにメールをした。
母が携帯を閉じた直後
リビングにいる父の携帯が鳴った。
おそらく父に送ったのだろう。
父は携帯を持って立ち上がると、
そのまま他の部屋へ行ってしまった。
母は笑みを浮かべていた。
川上はリビングでTVを見ていた。
少しして父はリビングに戻ってきて
母の顔を見るなり、
2人揃って川上に近づいた。

「川上くん、あけましておめでとう」

「これは俺たちからのお年玉だよ。
今年も美佐を宜しくな?」

2人は優しい笑顔で
川上にお年玉を差し出していた。
川上は躊躇しているようだ。

「えっ……だけど悪いですよ」

あの時川上の母さんが
私を必死に説得したように
父と母は川上を説得して
お年玉を受け取らせた。

「良かったね、川上!」

それからは皆で
他愛もない話を繰り広げていた。
途中から、私の携帯が
異常に鳴り始めていたけれど、
私は無視をする事にした。

後でいいやと思って。



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