分かんない。



「あっ、川上の兄さん、
ありがとうございます…」

川上の兄さんは
照れ臭そうに頭を掻いた。

「いやぁ、克哉が
美佐ちゃんとはぐれたっつーから
克哉ほったらかして探しに来た。
そしたら美佐ちゃん
あの変な奴に絡まれてんだもん。
焦っちゃったなー。
でもあいつ、どっかで見たし、
中1であってるよね?」

「はい、合ってます…」

川上の兄さんは
うん、とうなずいた。

「じゃあ、
克哉たちのとこに戻ろっか」

川上の家族は皆、
私の心配をしてくれていたようだ。
川上のお父さんは
敢えて安心させたかったのか、
笑顔だった。

「無事で何より。
しかし災難だったね。
どうにか美佐ちゃんを
ちゃんと守ってやれないかな、
なあ、克哉?」

「あ?あぁ、そうだな……」

父にそう言われた川上の頬は、
少し赤に染まっていた気がした。

その後は何事もなく、
無事川上の家に
戻って来る事が出来た。

「今日は色々と
ご迷惑をおかけしました。
お世話もして下さって
ありがとうございます」

気づけばもう家に帰る時間。
玄関にて皆に礼を言う。

「いえいえ、いいのよ。
うちには男しかいないから
女の子が来て新鮮だったわ。
こちらこそありがとう」

「俺も母さんと同意見だ。
娘を持つ父親の気持ちが
なんとなく分かった気がする。
貴重な体験だったよ。
ありがとう」

「可愛い美佐ちゃんが
まさか俺の家に
泊まってくれるなんてね。
まぁお目当ては
克哉だったみたいだけど?
またお祭りとか
色んな所に連れていってあげるよ」

家族の皆に言葉をかけてもらって
玄関の扉を開けようと手をかける。

「こういうのは俺がやらないとな」

川上が代わりに扉を開けてくれた。
本当に些細な事なのに
小さな優しさが身に染みて
思わず頬を緩めた。

「じゃあ、行こっか。神埼」

川上がどうして今
こうして私を
送ってくれているのか。
祭りの時も含め
私は変な人に絡まれやすいから
男友達である川上が、
帰り着くまで
ボディガードをするためだ。



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