白き薬師とエレーナの剣
「良かったらこれからも花束を作ってもらえるかしら? お礼は必ず――」

「あの、私で良ければこれからもお作りします。でも……お気持ちは嬉しいのですが、私は王妃様に喜んで頂くことが一番の望み。こうして嬉しそうなお顔を拝見できて、もう十分にお礼を頂きました。ですから、これ以上は受け取れません」

 いずみが慌てて小首を振ると、王妃の目が一瞬丸くなり、小さく吹き出した。

「それは困ったわ。貴女のために色々と取り寄せて準備していたのに、すべて無駄になっちゃうわ……せめて何か一つだけでも受け取ってくれないかしら?」

 柔和な物腰なのに、なぜか有無を言わせない迫力がある。外観は似ていなくても、やはりイヴァンとは親子なのだと実感してしまう。

 どうすれば良いか分からず、いずみは隣に控えていたトトヘ目を泳がせる。
 すぐに思いが伝わったらしく、トトが柔和に微笑んだ。

「せっかく王妃様がそう仰って下さるのだから、エレーナの好きな物を言えば良いんだよ」

「ああ。母上は贈り物が好きな人だから、早く言わないと取り寄せた物すべて受け取る羽目になるぞ」

 背後に立っていたイヴァンから、からかい気味の声が飛んでくる。
 チラリと後ろを見やると、その顔に薄っすらと楽しげな笑みが浮かんでいた。

 言わざるを得ない雰囲気に、いずみの思考が目まぐるしく働いた。

(ど、どうしよう、本当に何もいらないのに……)

 必死に考えて、考えて――ようやく欲しい物が浮かんだ。

「ではお言葉に甘えて……日持ちするお菓子を頂けませんか?」

 いずみが王妃の顔を伺いながら口を開くと、王妃は小さく笑った。

「遠慮せず、もっと高価な物でも良かったのに……分かったわ、侍女に用意させておくから、帰りに忘れずに受け取って頂戴」

「ありがとうございます。これでいつも休みなく働き続ける兄を元気づけることができます」

 ホッといずみが胸を撫で下ろしていると、なぜか場の空気が困惑したような色を見せる。

 変なことは言っていないはず……と、いずみが戸惑っていると、王妃が悩ましげに人差し指でこめかみを押さえる。

「んー、どう言えば良いのかしら? ……お兄様用のお菓子は準備するから、貴女自身が必要としたり、楽しんだりする物を教えて欲しいの」
< 109 / 109 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

黒き藥師と久遠の花【完】

総文字数/266,966

ファンタジー380ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
~~ファンタジー小説大賞にエントリーしました~~ 読者投票の中間発表で、Bクラスになりました! 投票してくれた皆さん、ありがとうございます(m0m) 『久遠の花』と呼ばれる優秀な薬師の一族。 そんな彼らを守り続ける、 『守り葉』と呼ばれし者たち。 しかし『守り葉』である子供・みなもは、 守るべき花を失ってしまい、 再会を夢見て薬師として生き続けていた。 時が過ぎ、そんなみなもの元へ現れた、 一人の傷ついた青年。 彼との出会いが、 みなもの運命を変えた――。 ※ようやく番外編も完結しました。 そして新たな物語の執筆をスタートしました。 みなもの姉、いずみの過去話『白き薬師とエレーナの剣』。 新作の方から読んでも楽しめるように執筆しますが、 こちらの『黒き薬師と久遠の花』も一緒に読んで頂ければ幸いです。 ※感想&レビュー、ありがとうございます(m0m) ここ最近ちょっと自信を無くしていたので、本当に励みになりました。 これからもどんどん執筆していくので、よろしくお願いします。
カエルと魔女の花嫁探し

総文字数/22,026

絵本・童話34ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
むかしむかし、 森に住む若い魔女がおりました。 ある日、カエルの呪いをかけられた王子が訪れて、 泣きついてきました。 呪いに解くためには、 王子を愛する乙女のキスが必要。 そんな姫を見つけて、キスをしたのだけれど、 王子の呪いは解けなかったのです。 魔女は呪いを解くために、カエルの王子とともに、 愛してくれる乙女……花嫁となる娘を探しに行くのでした。
永劫の罪人 光の咎人

総文字数/107,026

ファンタジー167ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
次期教皇の少年僧ロンドと、 『永劫の罪人』と呼ばれた罪人の物語。 死人還りの薬によって甦ってしまった 『永劫の罪人』。 しかし、その正体は意外なもので、 記憶も無くしている――。 なぜ『永劫の罪人』と 呼ばれるようになったか? 彼の者との交流を深めながら、 ロンドはその謎へ近づいていく――

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop