《短編》空を泳ぐ魚2
翌日の学校は、白石の話題で持ち切りだった。


桜井先生の本性を知らない生徒たちはみな、

口を揃えて“美奈子ちゃんが可哀想”だと言いやがる。


可哀想なのは、俺なんだよ。



「清水!」


遅刻してきたその姿を見つけ俺は、名前を呼んで駆け寄った。


向けられた冷たい視線に、返事はない。



「…白石、自宅謹慎になったの知ってるか?」


「えっ…?」


まるで知らなかったのだろう清水は、戸惑うように俺を見つめた。



「…誠、何かやらかしたの?」


「詳しく聞きたいなら、今晩来い。」


「―――ッ!」


声を潜めてそれだけ告げ、目を見開いた清水を残して立ち去った。


心臓が、嫌な音ばかりを刻み続けていて。


これで来なかったら、マジで俺たちは終わったのだろう。


だけど来て、白石の心配なんかされたって悲しいんだろうけど。


だけど今は、こんな言葉しか思いつかなくて。


その日が終わるまで俺は、緊張ばかりに包まれた。





―ピーンポーン…

「―――ッ!」



来た!


そう思い俺は、一度呼吸を整えて玄関へと向かう。



―ガチャッ…

「…セナ…」


その顔を見た瞬間、抱き締めたくなって。


だけど清水は、顔を俯かせたまま。


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