点零

3


チェスのやり方は

彼の囲碁にも新しい変化をもたらした
形がどうとかではなく
勝たなければならない

形ばかり考えて
綺麗な碁を求めても
チャレンジなき囲碁は
人生さえも衰退させているのではないか



彼女の声で目覚めた

>おはよう!

もう化粧も終わって着替えている

>ちょ!16分待って!

>いや、ゆっくりでいいよ!



16分後に車に乗った2人は
昼のSOGOに出掛けた

ロシア料理の看板に
この前冗談で入ったら
結構美味しくて
朝ごはんはたまにイワーニャに来ていた


やたらと風が強く
地下からエスカレーターを上がると

みずほ銀行の前で
雪が横から顔に当たる

舞い上がる雪は
雪に憧れた九州の彼には
楽しみだったが

地元がここの女の子には
大変だった



二人手を繋ごうとして
手袋がごわごわするので
彼女はとっさに手袋を外した

彼氏は温かさに
少しぼーっとした
しかし少し強く握りしめてみた


愛と言うものが
何なのかなんて
愛を知らない人にどれだけ答えを求めてみても

この瞬間が
確実な1つの答えであり

雪が激しく飛んで
冷たいはずの手が


心の温かさに
まるで完全に繋がっている



気付けば
SOGOに入ると
暖かいはずなのに

まだ外にいたいような
不思議な気持ちだった




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