運命を変えるため。

「俺も、挨拶して良い?」

 厚かましい申し出に、嫌な顔一つせずに静かに微笑んだ彼女は、どこか嬉しそうにも見えた。
 明日香に続いて仏間に入り、遺影の前に腰を降ろす。その人は、明日香に良く似た、穏やかな微笑みを浮かべていた。

 義母さん、なんて呼ぶのは、まだ早過ぎるだろうか。それでもいつか、堂々とそう呼べる日が来ることを、俺は密かに願う。
 目を閉じて手を合わせ、心の中で挨拶をする。そして、誓う。

 俺が明日香を、守ります、と。
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