運命を変えるため。

「でも、何でも一番じゃなきゃ……ゆうちゃんの初めては私じゃなきゃ、嫌だ」

 再び瞳に涙を滲ませる彼女を見て、思う。
 あぁ、勝てないな。明日香には、勝てない。

 今度は俺が、明日香を抱き締めた。優しく、大切に。力を入れると壊れてしまいそうなほど華奢な身体を、抱き締める。

「明日香が一番だよ。抱き締めるのも、俺からキスするのも。結婚するのも、子どもを作るのも、明日香が一番。明日香だけ」

 頷きながらそれに答える明日香。肩に水滴が落ちるのを感じた。
 再会したときのものとも、先ほどのものとも、それはどこか違う意味合いを含んだ涙のように感じた。
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