ヘヴィノベル
突入!日教連総本部
 一つ一つの映像はせいぜいでも数分程度の短い物だった。それがいくつかセットになって一つのファイルになっていて、そのファイルが30ぐらいディスクに入っていた。最初の映像はどこかの中学の卒業式の光景だった。
 国家「君が代」の斉唱が始まる。だが、教師席の先生たちはパイプ椅子に座ったまま起立しようとしない。中にはこれ見よがしにそっぽを向いている教師までいる。
 次はまた卒業式、今度はどこかの高校だろう、やはり国家斉唱が始まる。すると十数人の教師が立ち上がり、生徒の列の真ん中を突っ切って会場から出て行ってしまった。卒業式の最中にだ。何なんだ、これは?
 俺がいちいち驚く間もなく信じられない光景が次々に映し出される。今度は運動会のシーンだろうか。なんと教師たちがポールから日の丸の旗を引きずりおろしている。それを止めようとする校長だろうか、偉そうな年配に人物と激しくののしり合っている。
 次は中学校の図書館の映像だった。「今月の推薦図書」という張り紙がある大机の上に5冊の本が並んでいる。前島が俺の横で「ヒッ」と驚愕の声を漏らした。そこに並んでいるのは、三島由紀夫の「金閣寺」、太宰治の「人間失格」、小林多喜二の「蟹工船」、川端康成の「伊豆の踊り子」、そして石原慎太郎の「太陽の季節」。
 どれもこれも18禁、それも極め付けの有害図書ばかりじゃないか!どうしてこんな物が学校の図書館にあるんだ?それも推薦図書ってどういう事なんだ?
 次の映像は少し長めだった。日教連のマークが入った鉢巻をした教師らしい人たちが、大勢の人に混じって拳を振り上げながら大声で怒鳴っている。場所はなにか見覚えがある。ひょっとして東京都庁か?
「検閲復活を許すな!」
「表現の自由を守れ!」
「独裁者!ファシズムを許すな!」
 教師たちは口々にそう叫ぶ。近くの部屋から出てきた白髪のいかつい顔つきの人物に向けて叫んでいる。その人物はたまりかねた様子でくるっと振り返り、怒りをあらわにして怒鳴り返した。
「てめえら、自分の子供に見せられるのか?!」
 カメラの焦点が抗議の声を上げている一人が持つプラカードに映る。そこにはこう書いてあった。
「マンガ、アニメ規制反対」
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