夏色ファントム
静かな森に、不似合いな鋏の音が響く。
どれほど居座っているのだろうか。
朝御飯も抜かしてきた俺の体力は、既に限界に達しつつあった。
作業を進めながら、背中に彼女の視線を感じる。
「……まだ?」
「あと一本……」
息を切らし、祠の隣にある木に歩み寄る。
これで最後だ。
そう思うと嬉しくなる反面、どこか切ない気持ちにもなる。
縄に鋏を入れようとしたその時、ガサッと葉を踏み鳴らす音が聞こえてきた。
振り返ろうと身体を向ける。
その瞬間、怒声が聞こえてきた。
「お前!そこで何をしている!!」
「やっべ……」
怖そうなおじさんが走ってくる。
俺は前を向き、鋏に力を入れた。