夏色ファントム
「そうだけど……」
「だったら、周りの木に巻いてある注連縄を切っちゃえば、助けることができるんじゃないか。
それが俺の考えだ」
「……」
またもや黙り込んでしまった。
何でもいいから喋って欲しい。
俺は鋏をねじったりしつつ、とにかく注連縄を切ろうと躍起になっていた。
段々縄がほどけ始め、最終的にパチンという音と共に足元に落ちた。
「……一本目」
凛が静かに言う。
俺は振り返り、彼女を見た。
昨日は気付かなかったが、よくよく見ると、彼女の腕や足などに注連縄で巻かれた痕が見える。
「あといくつあんの?」
「……四本。両腕、両足、首だったから」
「あらー……」
こりゃあ大変なことになりそうだ。
俺は次の木に近寄った。