私だけ見てて。お願い。
「彼女に愛妻弁当は作ってもらわないんですか?」

「あ~あれはうそだよっ。」

「えっうそっ!?なにが嘘なんですか?」

「彼女はほんとはいないんだ。」

「そうなんですか!じゃあなんでこの前嘘をついたんですか?」

「だって彼女がいるって言わないとなんかかっこ悪くないか?もうこの年なのに。
それにここに長く勤めている先生から彼女がいるっていっといたほうがいいって言われたんだ。女子校だからどうのこうのって。」

「そうなんですかあ!?まあ女子校だしねえ。」

「あっ誰にも言っちゃいけないぞっ。杉野しか知らないんだから。女子校ってすぐ噂が広まるしな。」

「わかってます。秘密にします。」

「そういってくれたら助かるよ。じゃあくれぐれも体調には気をつけて。」

「ありがとうございました。失礼します。」

「なんかあったらいつでも先生のところにくるんだぞっ。」

「はいっ。ではまた。」


先生には彼女がいなかった。なんだかちょっぴり嬉しかった。ちょっぴりじゃないかもしれない。それに自分だけに教えてくれるなんて。
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