珈琲の香り
素直に泣いたり、笑ったりできる。

あれこれ考えたり、悩んだり、戸惑ったり……

そんなことがない。

ありのままの自分でいられる。

それが『好き』ってことなのかな?



「……いっちゃん……それが答えだと思うよ……」


そっと差し出されたティッシュで、自分が泣いていたのに気がついた。

涼さんの事を思うと、自然と涙か出る。

それが答え………


「諦めたくない……涼さんが………好きだから………」

「それでいいと思うよ。恋人になれるかなんて、誰もわかんない。でも、好きって気持ち、隠すことも誤魔化すこともしなくていいんじゃない?お互いフリーなんだし」


桜はそう言って優しく笑った。


お互い、フリー……か……

付き合うとかじゃない。

涼さんを好きでいる。

それだけの事……


「いいんだよね?好きでいても……」

「当たり前でしょ!」


桜が力強く頷く。



過去に何があっても、今の涼さんが好き……

それでいいんだ。

こんなに簡単な答えなのに、私は何を悩んでいたんだろう?

相手の過去ばかりを気にして、自分の気持ちに蓋をしようとしていた。

無理に蓋をすれば、そこから溢れ出すのに……


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