珈琲の香り
「ウソ…」


大学入学と同時に実家を出て、やっと見つけた私好みのコーヒーを飲ませてくれる喫茶店。

それが…


「いきなり閉店だなんてー!!」


確かに、お客さんは少なかったよ。

おじさん一人でやってる店だったよ?!

しかもおじさん、持病があるって言ってたけど…

でも!

でも…何で閉店しちゃったのー!!

ここがなくなっちゃったら、私のコーヒーはどうなるの?!

ホームシックになったときも、課題で行き詰ったときも、彼氏に振られた時も…

おじさんの入れてくれるコーヒー飲んで元気になってたのに!

おじさんのコーヒーがなくちゃ、私…

もうだめになっちゃうよ…



「明日から…どうしよう…」


固く閉ざされた扉の前から、肩を落としてとぼとぼ歩く…


土方 樹(ひじかたいつき)。若干20歳にして、生きる希望を失いました…


大げさだと思うでしょ!

でもね、課題の詰まった今、おじさんの淹れてくれる美味しいコーヒーがなくちゃ、課題も進まないのよ…

カムバック!おじさーん!!

…そんなこと思ってても、しょうがないか…


「は~~~~」


新規開拓、しなくちゃ…


でも、とりあえず家に帰って、買いだめしたおじさん印のコーヒー、淹れよう…
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