珈琲の香り
涼さんに手渡されたメモには、モーニングのサラダに使う野菜やら、パン屋さんの注文やら、あれこれ書いてあって…


「…絶対一人で持ちきれない…」


重さはそんなにないんだよ。たぶん…

ただね、ただ、量が半端なく多い。

140cmの小さな私が持てる量では…きっとない…


「涼さんのいじわる~!!」

文句を言っていてもしょうがない。

とにかく買い出しに向かわなくちゃ。


ゆるやかな坂を下って、駅向こうの商店街まで。

うだるような暑さの中、のんびりと歩く。

ノースリーブから延びた腕を、夏の日差しがジリジリと焼いていく。

きっと桜は、日傘なんか差してるんだろうな。

そう言えば、「可愛い日傘かったんだ」とかって言ってたし…

私も日焼けとかに気を付けたほうがいいのかな?

…でも、桜みたいに日傘持ってたら、荷物持てないし…


「そうだ!日焼け止めだけでも買おう」


少しは女の子らしくしておかないと…本当に彼氏、できないよ~…


ブツブツといいながら歩く足を速める。

早くしないと、涼さんから「おせーよ」って叱られちゃうから。

…こわいんだよね…そーゆーとこ。


「まずはスーパー行って~、そのあとパン屋行って~、荷物持てそうなら薬局寄って~…」


商店街で回る順番をシミュレートしてみる。

最短ルートで回らないと、暑さで倒れちゃうよ~…
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