珈琲の香り
昼過ぎの商店街は人がまばらで、閑散としてる。

そりゃ、そうだよね…

こんなに暑いんだもん。

普通ならおうちで昼寝とかしてるよね。

私だってバイトしてなかったら、家で寝てるか、学校行って、涼んでるかだし…


「…まずはー、スーパー行って野菜買おう!」


寒いほどの冷房が効いた店内は、砂漠で見つけたオアシスのようで…

太陽に照らされた体を冷ましてくれる。

暑い中20分以上歩いてきたんだもん。

少しくらいゆっくりしたって、いいよね。



涼さん、買い出しに出て1時間くらいで帰らないと、ものすごく怒る。

「たかが買い出しでどこまで行ってんだ」って。

お店が忙しいなら、叱られるのもしょうがない。

だけど、忙しくないのに、遅くなると叱られる。

…門限破った娘みたいな感じ?

バイト時間が決まってるわけでもないし、時給もあってないようなもんだし。

遅くなっても、涼さんには迷惑かけてないつもりなんだけどな…


涼さんの怖い顔が目の前にちらつくけど、とりあえず汗が退くまで、お店の中、ウロウロしちゃおう。

私はレジカゴを手に取ると、冷房の効いた店内をゆっくりと見てまわる。


そう言えば、今日は桜、家にいるって言ってたな。


「…ついでだから、晩御飯の材料、買ってっちゃおう」


入口に戻って、カゴをカートに持ち帰る。

やっぱり、お店のものと自宅の物は、分けなくちゃね。
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