珈琲の香り
私が父親似の黒髪なのに対して、桜は母親似の茶髪。

しかも顔まで正反対で、桜は可愛い系なのに、私はクールビューティー。

…と言っても、ホントのクールビューティーとは月とスッポンくらいの違いはあるけど…

二人でいても、「双子」っていうとすごく驚かれる。

それくらい正反対。

…唯一、身長だけが一緒。

だけど、スタイルはやっぱり正反対…

もちろん性格も正反対で…


そんな桜と一緒に家に向かって歩き出す。

…ホントは一緒に歩きたくないのよ。

だって…桜は美人だから、一緒にいると比べられるんだもん。

だからといって、仲が悪いわけじゃないんだよね。

一緒に暮らしてるし…

だけどね…


「コンプレックス感じるんだよ…」

「…何ブツブツ言ってるの?今日の夕飯、いっちゃんの当番だよね?」


…忘れてた!

おじさんの店がなくなって、美味しいコーヒーのことばっかり考えてたから、すっかり忘れてたよ…


「桜は何が食べたい?」

「うーん…パスタ…かな?」

「じゃあ、今日はなすとトマトのパスタにしようか」

「オッケー…って、ちょっとごめん。」


桜の携帯が鳴ってる。

これは…もしかすると…


「ごめん!!急に呼び出しかかっちゃった…」


やっぱり…

桜には2年付き合ってる彼氏がいる。

仕事が忙しいらしく、なかなか会えないって言ってたけど、こうやって急に呼び出しがかかる。

…ということで、今日のパスタは中止だね。


「行っておいで。パスタはまた今度作るから」

「ごめん!!ホント、ごめんね!」


そう言って走り出した桜の後姿を見送る私って…


「はー…彼氏、欲しいな…」


前の彼氏とは1年前に別れちゃった。

入学とほぼ同時に告白されて付き合ったけど、3か月後には振られちゃったんだよね。

「なんか違う…」っていう、訳わかんない理由で…
< 4 / 174 >

この作品をシェア

pagetop