珈琲の香り
久しぶりのバイクは気持ちがよくて、『このままツーリングにでも……』なんて思ってしまった。


……いかん、いかん。


遅刻するからってバイクにしたのに、ツーリングとかって思ってる場合じゃなかった!



「とりあえず……どこに置こう?」


初めて涼風までバイクで来たけど……停めるとこ聞いとけばよかった………

まっ、店の前に停めさせてもらって。



「…――遅くなりました……」


バイクで急いだ甲斐がありました!

まだ8時過ぎたばっかりで、お客さんもまだ少なくて……

でも、カウンターの中にいる涼さんは、ほんの少し怒ったような顔をしてる。

まあ、無愛想な顔してるから、よく見ないと怒ってるか判断がつかないんだけど。

でも、何で怒ってるのかな?

遅刻したこと?

でも、前にもう少し遅くなったこともあったし……



「…――遅れるなら連絡しろ」


………あ。

間に合うか、間に合わないかでパニックになってて、すっかり忘れちゃってた。


「……すいません。」

「…次は忘れるな。」

「はい……」



心配……してくれてたのかな?

それはちょっと……


「…来るもんが来ねぇと気持ち悪い」


――嬉しくないっ!


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