珈琲の香り
幸せになれ。

蒼君はそう言う。

だけど……涼さんには奥さんがいる。

それを教えてくれたのは、蒼君自身。


「…幸せに……なれないよ……だって、涼さん、結婚してるんでしょ?」

「……それね。正しくは、結婚してた…なんだ。」

「え……?」

「風花さん…僕の姉だけど、今はもういないんだ……」

「今、何て……?僕の姉?もういない?どういうこと?」


頭を殴られたような衝撃だった。

私の頭が悪いから理解できないの?

それとも、蒼君がからかってるの?

オロオロとする私の反応を楽しむように、蒼君が笑顔を見せる。


「ちゃんと説明して?蒼君、涼さんのこと、兄だって、にいちゃんって呼んでるじゃない!」

「ああ、それね。昔からそう呼んでるんだ。」


何かを楽しむように、蒼君は風花さんと涼さんのことを話してくれた。


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