珈琲の香り
「――…まあ、どっちがフラれてもいいか。蒼のあんな顔、初めて見れたしな。これで少しは大人になるだろう。」

愉快そうに笑っていた涼さんが、スッと大人の表情に戻る。

「――聞かないんですか?」

「何をだ?」

「終わった原因……」

「聞いて欲しいか?」

「いえ……」

「蒼もお前も、言いたくなったら言うだろう?それでいい。……それに、そんなに興味もねぇしな……」



興味ない……か……

そうだよね……

義理の弟と従業員の恋愛なんて……

でも、少しショックだな。

少しは興味持ってくれてもいいのに…


「さあ、続きをやるぞ。覚悟はいいか?」


いつもの顔に戻った涼さんが、店のドアを開けて待っている。

私はその間を潜るように店へ戻る。


店はコーヒーの匂いが立ち込めていて、気持ちが少しだけ落ち着くのを感じた。

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