珈琲の香り
「……涼さん」

「あ?」

「…何でもない……」

「変な奴だな。」


聞きたいけど、聞けない。

『奥さんのこと、今でも愛してる?』

聞いてしまったら……

例えどんな答えであったとしても、きっと今までみたいに笑えない。

今はまだ、涼さんといたい。

凉風で、働いていたい。

……でも、それより……

明日からどんな顔して蒼君と向き合えばいいの?


「…蒼と、終わったって言ったよな……」

「はい……」

「そうかー!」


………?

「涼さん……?」

「いや。不謹慎か?でも…ププッ」

――――?!

何で?

何で涼さん、笑ってるの?

「いや。すまん。……ププッ、あはははー!」

肩を震わせて、これ以上面白いことがないと言わんばかりに大笑いしてる。


「いやー!お前らには悪いが、あんなにきれいな顔した蒼がフラれたなんてなー!」

「あの……蒼君がフラれたとは……」

「じゃあ、お前がフラれたか?」

「うーん……」

「違うだろ?お前、フラれた女の顔してないからな」


……フラれた女の顔って……

いったいどんなのだよ……

でも……

蒼君をフッたのかな?

それとも、私がフラれたのかな?

わかんない……

原因は私。

蒼君と付き合ってたのに、涼さんに惹かれたから……

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