桜が求めた愛の行方
さくらを溺愛していた要人さんに頼まれて
よく様子を見ていたが……

勇斗は崇がしつこくデートをセッティング
しろと迫ってきたのを無視し続けた事を
思い出した。

『崇、おまえこそ、さくらに執心だった
 じゃないか!』

『だってそれは、
 おまえが焦るのが面白かったから』

『なっ!』

絶句する勇斗に蒼真がさも面白そうに
笑って言った。

『勇斗さ、覚えてるか?
 臨時の音楽講師がさくらちゃんに
 ちょっかい出してるって聞いて
 おまえどうしたっけ?』

『別に……』

勇斗はちょっと脅しただけだと小声で呟く。

『それよりあいつのが悲惨だったよ、
 ほら!アイドル崩れの……』

崇が言えば零士が人指し指で勇斗を差した。

『なんとかあきらだろ?』

『柳本あきらだ』

渋々勇斗が答えると、
またしても3人が同時に爆笑した。

『くそっ、人を酒の肴にするな!』

『勇斗、おまえなんで離婚するんだ?
 美那とやり直すなんていうなよ?』

零士が逸れた話を元に戻した。

『美那はすでに過去だ、
 やり直すつもりなどあるわけない!』

『じゃあ、おまえは何をそんなに
 やさぐれてるんだ?』

『おれは離婚なんかしたくないが、
 あいつは……』

ヒューと崇が口笛を鳴らした。

『マジ?おまえあの佐伯勇斗か?』

『崇やめろよ!本気になったら
 誰だってそうなる』

『妻帯者はわかるって?
 蒼真、おまえんとことは事情が違うだろ』

『おまえら煩い!黙れ!
 勇斗はこんなとこにいないで、
 さくらちゃんときちんと話し合うべき
 じゃないのか?』

『話もなにもない、さくらは初めから
 そのつもりだったんだ……』

勇斗は酒の勢いで、
これまで話していなかった結婚までの
いきさつを一気に話した。

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