桜が求めた愛の行方

12.弟がくれた真実


昨夜、ニールの呼び出しに渋々応じた真斗は
さくねえとの出来事を聞き
またしても、兄に対し怒りを覚えた。

色々調べた結果、兄の昔の恋人はモデルの
美那だとわかった。
彼女は一時期パリコレで活躍したが
今年から日本に拠点を移し、
国内のコレクションや
化粧品のイメージモデルに起用されている。

真斗の勘は当たっていた。
彼女が、さくねえと兄さんの結婚を
知らなかったはずがない。
まだ掴めていないが、何か裏があるはずだ。

そのことを兄に忠告しようとする前に
ニールから、さくねえが憔悴していると
連絡がきた。

どうして兄さんはさくねえの気持ちを
考えないんだ!

いつだって自分の都合、自分の思いを優先
させてばかりじゃないか!

真斗は怒りを隠すことなく、兄のオフィスへ
向かい、止めようとした秘書の田所を
無言で下がらせた。


バタン!!
大きな音で閉められたドアに、勇斗は驚いて
顔をあげた。

『真斗?』

この顔は前にも見た。
弟は本当に怒っている時は、母そっくりだ。
それは、佐伯家にとって恐怖の顔。

『どうした?』

イライラを隠そうともせず、弟は俺を睨んだ

何か言葉を言うつもりはまだないらしい……
無言で睨み付けられる。

内線が鳴り、
《山嵜さまからお電話です》
と、田所の声だ。
状況を察する有能な秘書が出ろと言っている。

『少し待て』

勇斗は受話器を取った。
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