桜が求めた愛の行方

『なんだって!!』

沢木は押さえきれない衝動から、
思わず立ち上がり、目の前の男の胸ぐらを
掴みそうになった。
記者はそれを脅しと勘違いした。

『す、すみません!わかりましたよ。
 まさか、ここまで藤木のガードが
 固いとは……それほど軽井沢のホテルに
 再起を賭けているんですね……
 いいでしょう!わかりました。
 完成パーティーを楽しみにしています』

『あ、ああ……』

うなずくのが精一杯だった。

とにかくすぐに手を打たなければならない。
このまま俺が大人しくしていると思うな!!

体中が怒りに支配されていく

軽井沢に再起を賭けているだと?
ふざけるな!!

あんな古くさくてさびれたホテルは
さっさと売却して、あそこには複合型の
レジャー施設を作らせる。
すでにその計画が進められているのだぞ!

密かに渡されたリベートは、新しい女に
必要なものを与える為に使ってしまった。
もちろん、返すことなどするものか!

山嵜にまんまと騙されたのか?
……いや、違う。
あのとき娘を引き合いにした時の
あの怯えた顔は本物だった。

……あいつだ!
あの忌々しい秘書の仕業に違いない
名前を変えて、隠密に計画を進めるとは!
姑息な手段で油断させやがって!!

いいだろう
そっちがそのつもりならば、こちらも
最後の手段を使うまでだ。

軽井沢の完成パーティーまであと一週間。
時間はまだ残されてる。

必ずや全てを俺のものにしてみせる。
社長の椅子に座るのはこの俺なのだ!


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