桜が求めた愛の行方

勇斗がすみれと会ってから二週間後、
軽井沢は、ほぼ完成していた。
新なレストランは、 内装やインテリアを
変えることで、大きな変更をせずに済んだ。

拠点を東京に戻してからも、どうしても
気になって、週の半分はここへ来ている。

勇斗は壁が取り払われたロビーに射し込む
柔らかな日差しを見て、大いに満足して
うなずいた。

ここまで来ればもう大丈夫だ。
あとは完成パーティーを待つだけだ。

それが済んだら、自分にはやるべき事がある

ほぼ間違いないと確信している
〔その事〕は、軽井沢が完成するまで、
考えないようにしてきた。

だが、日増しに記憶の中の疑問が鮮明に
なっていく。
確かめずにいられるのも、もはや時間の
問題だ。

あの日以来、さくらの様子が明らかに
変わった。
本人はそんな素振りを見せずに上手く
隠しているつもりだろうが、俺にはわかる。

目が覚めて求めるのはいつだって
俺の特権だったはず……

彼女はどこまで知ってるのだろうか?

もし俺が思っている通りだとしたら……

くそっ!
何をどう考えたらいいのかわからない

俺は……なぜ母さんは……
様々な疑問とこれまで腑に落ちなかった
思いへの納得が、心と頭を占領している。

真実と向き合うには覚悟がいる
いや、そうじゃない……

ちくしょう!
今更それでどうなるんだよ!?

明らかにした所で傷つくのは彼女の方だ

さくらを失う様な事は二度としないと
誓ったんだ。

どんな真実も彼女を失う位なら
この胸に留めておけばいい。

さくらを愛してる

それ以上に必要なものなどない!

過去に何があろうとも、
未来を俺たち二人で築いていけばいい。
大切なのは今なんだ。

見えない答えはすぐそこにある

そうだよね?


………要人さん

…………いや、

………………

………………

……………お父さん



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