桜が求めた愛の行方

『よかろう。ビザは直ぐ手配する。
 だが、それが偽りではないと言う
 証拠にその指輪をよこすんだ』

『えっ!』

『離婚するんだ、必要ないだろ?』

『そうだけど……これは……』

どんな時も外さなかった大切な指輪。

彼が誓うように口付けてくれた記憶が
一気によみがえり、さくらは思わず瞳を
ぎゅっと閉じた。

『ふん、馬鹿らしい!
 何を感傷的になっているんだ?
 見たところ大して値が張るものでも
 なかろうに』

これの価値は他人にはわからない!

でもこれを付けていられるはずもないわね。

『わかったわ』

外す瞬間、さくらは心が張り裂けるような
痛みを感じた。

『これで解放してくれるわね?』

『いや、まだダメだ!
 明日の臨時役員会まで、ここで大人しく
 しててもらおう』

やっぱり!!
臨時役員会で彼を追放するつもりだわ。

『そんな事!彼が私を探すに決まってるわ』

『なるほど。
 あの男はおまえにメロメロだからな。
 友達の所に泊まるとメールしておこう』

雪成はさくらの鞄から、携帯を出した。

『おまえが打っておけ』

女性に携帯を渡している。

『どこまでも卑怯な人ね』

『なんとでも。
 おまえにどう思われようが
 俺が気にかけるはずがないだろ?』

『それもそうね』

さくらはこれ以上何か言うのを諦めた。
今はあの女性から携帯を奪うことを
考える方が先だわ。

大人しくなったさくらを見て
雪成は満足気に部屋を出ていった。




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