桜が求めた愛の行方
『俺は絶対にあんなものは着ない』

『で、でもあれはおばさまが……』

『おまえ、俺があれを着るところ少しでも
 想像したか?』

『それは……』

さくらは吹き出しそうなのを堪えている。

『おまえは、俺たち佐伯家の男性陣が
 母さんに逆らえないのを知っているだろ?』

『ええ、それはもう……』

言いながら彼女はくすくす笑いだした。

『あれを身代わりで着せられていた時の
 まーくんの顔ったら……』

哀れな真斗が目に浮かんで、
つられて笑いそうになる。
すまん、真斗。
口を引き締めてわざと怖い顔を作った。

『ったく、もう少し俺の事を考えてくれても
 いいんじゃないか?!
 おまえの隣に立つのは俺だぞ?』

さくらは口を結んで横を向いた。

『ごめん、なさ、い』

笑いを堪えながら言っている。

『想像しなくていい!!』

『そう言われても……ぷっ』

ついに堪えきれず、
さくらはこぼれるような笑顔で笑いだした。
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