桜が求めた愛の行方
勇斗はその笑顔に魅せられてしまった。

ずっと前にもこんな風にさくらの笑顔に
ぎゅっと胸をつかまれたことがあった。

あの、さくら曰く……悪夢の食事会の時だ。

俺はあの日、隠れていた自分の気持ちに
気づいたのを無視したんだ。

しかし今は無視する理由がない。

この先も俺にはこの笑顔が必要だろう。

もうはっきりさせるべきだ。

『笑いすぎだ』

繋いでいた手を引いて、腕の中へ閉じ込めた。
さくらは驚いて顔を上げた。

戸惑いの瞳をじっと見つめて
そっと顎を持ち上げた。

顔に影を落とす瞬間、胸ポケットの携帯が鳴りさくらが弾かれたように飛び退いた。
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