桜が求めた愛の行方
第二章

1.綺麗な花嫁

はぁぁぁ。

先ほどから、声にならない羨望のため息が
そこかしこから漏れている。

『なんてお綺麗なんでしょう』

『本当に、こんな綺麗な花嫁さんは
 見たことありません!!』

ヘアメイクを施しているスタッフの言葉に
さくらは恥ずかしそうに笑った。

『皆さん、誉めすぎよ』

五年前、契約のように婚約した時は
まさかこんな気持ちで、この日を迎えられるとは私自身も思っていなかった。

有無を言わさず結婚を突きつけられた彼が
自分に情熱を向けてくれるなど
誰が思っただろう

《とりあえず》ではないのよ

本当に結婚するの!!

沸き上がる喜びに全身が溶けてしまいそう

内面から溢れ出る幸せのオーラに

さくらはかつてない程、満ち足りていた。

『あーあ、なんだよその笑顔』

『まーくん!!』

喜びを抑えきれず駆けだすと、
躓きそうになった。

『ほらっ、もう!』

真斗は笑いながら抱き止めた。

『ありがとう』

準備を終えたスタッフ達が気をきかせるように部屋から出て行く。

『一足先に見てたのに全然違うな』

『そっ、そう?』

『う~ん、さては兄さんと何かあった?』

『なっ』

さくらは顔を真っ赤にした。

『もおーそんなあからさまに……
 想像させないでくれよ』

『やっ!しないでよ!!』

『なにを?』

『まーくんっ!』

たまらず真斗は爆笑した。

『さくねえが幸せで僕も嬉しいよ』

『まーくん……』

『あーダメダメ!!泣いたらメイク崩れるよ』

『泣いてないわ』

真斗は感傷的になっているさくらを見て、
悩むように天井を見上げて深呼吸した。

< 63 / 249 >

この作品をシェア

pagetop