桜が求めた愛の行方

『久しぶりだね!スイートハート!』

駆け寄り抱きつこうとする彼に
すかさず左手をかかげる。

ダイヤが埋め込まれたプラチナリングは
勇斗が強引に選んだもの。
今となってはそれもいい思い出で、
左手を見る度に幸せを感じてしまう。

『ストップ!!
 あなたのスイートハートはお払い箱なの』

『さくら……
 君は永遠に僕のスイートハートだよ』

ニールは胸に手を当てて、大袈裟に
傷ついた振りをする。

『バカを言わないで。
 私はこれでようやく、あなたが恋人と
 別れる度に、ブスとか泥棒猫とか尻軽…
 コホッ……以下自粛するわ、
 とにかく!もろもろの誹謗中傷される    日々から開放されたのよ!』

『あうベイビー、久しぶりに会った親友に
 そんな酷い事をいうのかい?』

うな垂れてるくせに、顔は満面の笑みだ。

『もぉ!!』

笑いながらニールに思いっきり抱きついた。

『私も会いたかったわ!』

『そうこなくっちゃ!』

溝口N 響《みぞぐちニールひびき》

ニールはお父様がフランス系日本人で
お母様はフランス系アメリカ人。
なので、外見はそちらの血が濃く出ている
けれど、実際は生まれも育ちもここ日本で、
普通に流暢な日本語を話す。

ニールと初めて会ったのは大学2年の夏
失恋した時だったわ。
あの時の複雑な心境は一生忘れられない。
その三年後のパリのキャンパスで再会し、
親友になるなんて思いもしなかった。

『さくら、少し痩せた?』

『そうかしら?』

『何だか顔色も悪いね?
 結婚生活に不安でもあるの?』

『心配してもらうような事はないわ』

『そうかい?』

『ええ、大丈夫』

『それならいいけど……』

『ところでニール、
 お家には帰らなくていいの?』

いつも同様、ニールは肩をすくめる。

『そう……お父様もきっといつか
 わかってくれるわ』

そっと手を握ると答えるようにニールの
手が重なった。

『さくらが哀しまなくていいんだって』

『ええ』

話ながら空港駐車場に向かって歩きだした。
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