花嫁に読むラブレター

「怒られたりしないよ。もしそんなことがあったら、ぼくも一緒に怒られるから心細くはないでしょ?」
「なにそれ! そこは『ぼくが怒られないように取り計らってあげるよ』じゃないの?」

 マイアが大口を開けて笑うと、ユンも嬉しそうに頬を緩めながら笑った。

 穏やかな陽射しと、穏やかな風。

 しばらくベンチでお互いのことを語り合いながら、山間に鮮やかな赤色がさしかかってきた頃、どちらともなく立ち上がり、丘の上の家を見た。

 ユンは手を差し出す。
 頬には、暖かそうな夕日が映っている。

 取ったユンの手は熱かった。彼がマイアの手を握り、一歩前へ進みだす。斜め後ろを追うように、マイアも歩く。

 突然、握られていたマイアの腕がひっぱられた。見れば、前を行くユンが石につまずいて前のめりに転んだではないか。

 マイアは転げるように笑い、ユンは土の上で恥ずかしそうに頭をかいた。

「いたた……。もう、なんか格好つかないなあ……」
「そんなの今に始まったことじゃないでしょ」

 今度はマイアが手を差し伸べ、ユンがその手を受け取った。

 二人並んで丘へと続く道を歩いていく途中、マイアは初めてユンと出会ったときのことを、ぼんやりと思い出していた。
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