花嫁に読むラブレター

「なんでわたしが悪いの」
「あ、うん。今のいいな」
「さっきから何が言いたいのよ!」

 にこにこと、マイアの怒りを無視して和むユンに、今度こそ怒りをぶちまけた。声を荒げて詰め寄るが、それでもユンは嬉しそうに微笑んでいる。

「うん、うん。いい雰囲気。そうやって、ぼくの家柄なんて無視してお話したかったんだ」
「……あ」

 いつの間にか、ユンを敬う態度を忘れていた。怒りにまかせて、ステイルにするように、感情をぶつけていたことに気づく。恥ずかしいのと申し訳ないのとで、謝罪の言葉すら出てこない。

「マイアさん。ぼくはマイアさんがこの湖が大好きだと言うみたいに、ぼくのこともぼくだからこそ好きだと言ってもらえるように、もっともっとたくさんお話したい。家柄なんて、ぼくが努力して得たものじゃないんだよ。そんなものに敬意を示してもらったって、なんにも嬉しくないよ」

「……怒られないかしら」

 気安い口をきいたと、ユンの周りの大人から鋭い視線をあびはしないだろうか。陰でこそこそ、マイアは礼儀のなっていない大人だと言われはしないか。成人を迎えたというのに、そんなこともわからないのか、と。
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