オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-

「まあ楓鹿が見た目重視だったり体目当てだったり女を見下してる男とばっかり付き合ってきたのは事実だけど」

「ちょ、言葉が剥き出しすぎる……!」

「トラもそういう男だと思ってるの?」


じっ、と射抜くようなミーアの眼差しに浮足立つ。


「そ、れは……思ってない、けど」


触れた唇に戸惑った。絡まる生ぬるさに背筋がしびれて、何も考えられなくなった。今も、ずっと、ドキドキしてる。


「でも、キスだけじゃ、分かんないよ……」


『好き』とも『付き合ってほしい』とも言われなかったものを、告白だなんて思えない。


「高遠って何もしなくてもモテちゃったから、受け身なところあるよなぁ。相手の出方を窺ってるっていうか」

「ほんとそれ。訊いてもないのに可愛いことは認めるくせに、恋愛に関してはてこでも動かないんだから」

「なんのために自分で元カレを追い返したんだろうなぁ」


ねー、と。体育館を分断するネット越しでミヤテンと同意し合ったミーアは、私に向けた目を細めた。


「トラが何をしたいのかばっかり考えてるみたいだけど、楓鹿はどうしたいわけ?」

「……、」

「楓鹿が“こうだったらいいのに”って思ってることがあるから、トラが普段通りでがっかりしてるんじゃないの?」


……そうかもしれない。

『好き』と言われなくたって、それを感じる何かを期待していた。いつも通りの、虎鉄らしさじゃなくて。


照れくささでも、もどかしさでも、何でもいいから。いつもと違うふたりに、ドキドキしてみたかった。
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