ショコラ SideStory
「あなたが聞きたいこと全部教えてあげるから、私の質問にもちゃんと答えてね。仕事が終わるまでは待つわ」
「康子さん、もうちょっといれば」
「いいわ。たまには私が夕飯作ってあげる」
スーパーに寄って買い物をして。
豪華な夕食を並べて隆二くんと詩子を驚かせてやろう。
ヤキモチを効果的なスパイスにするには、意地を張り過ぎないことだ。
「だからその後はあなたが上手に料理して」
私と彼だけに分かる言葉で、甘いお誘いをしておく。
むせる彼に手を振って、私は会計を済ませようとレジに向かった。
「あ、母さん。いいわ。マツさん全部払って行っちゃった」
「あらそうなの? おごるって言ったのに。まあいいわ。今度何かでお返ししましょう。
じゃあ帰るわ。詩子も楽しみにしてて、今日は腕を奮うから」
「期待しないで帰るー」
娘の冷たい言葉は聞き流して、外に出る。
入ってきた時より、ずっとスッキリした気分だった。
【fin.】