ショコラ SideStory

 恋人との電話って、どうしてこんなに長くなるんだろう。


「じゃあ、明日ね」


夜の10時から始まった電話を切ったのはもうすぐ日付が替わろうとする頃。

明日は定休日だからデートの約束をするだけだったはずなのに、一体何の話をしてこんなに長くなったのやら。

思い返せるほど実のある会話をしていないことにまた笑える。


「さて、お風呂入って寝よっと」


明日は何を着ようか。

宗司さん、大きい本屋さんにも行きたいって言ってたしなぁ。
一杯買うんなら動きやすい服装の方がいいかな。
母さんのクローゼットからなんか借りてもいいか。

パジャマを持ってお風呂に行く途中に、父さんと母さんの部屋の前を通る。

もう寝たかな。
寝てなかったら服貸してって言おうかしら。


「……あん、隆二くん」

「……!!」


ノックをしようとした途端に聞こえた甘い声。
これは母さんの声だ。
ちょ、待ってよ。何してんのー!!


「愛してる、康子さん」


続けて聞こえてくる親父の声。
やめてー! 勘弁して!


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