ショコラ SideStory

宗司さんは歩きながらあたしの手を握る。
この状況で慰められるのは嫌だな。
ますます宗司さんが大人であたしが子供にみえるから逆にいじけそうになるんですけど。


「さくらちゃんからちゃんとお代貰ってたじゃない?」

「うん」

「あれ見て、詩子さんは大人だなって思った。お客さんを子ども扱いしなかった」


にっこり、いつもの笑顔の宗司さんは、あたしのいじけた心を溶かすようなことをあっさりと言ってのける。

ああ、なんかやられたわ。

胸の奥深くから溢れ出てくる温かい気持ちが全身に広がっていく。

あたしの中が『嬉しい』と『愛しい』で一杯。
だからあなたといるのは幸せで、ずっとずっと一緒にいたくなる。


「……あたし、宗司さんとずっと一緒にいたいわ」

「詩子さん?」

「あったかいのよ」


氷になりそうな心も、簡単に溶かされる。

恋愛は人それぞれ色んな形があるんだろうけど。
あたしは多分緩んでいたいんだわ。温かい誰かのそばで。

親父にも母さんにもお客様にも、もちろん宗司さんにも弱いところなんて見せたくないけど。
甘えるんなら、他の誰より宗司さんがいい。

こんな気持ちが、『愛してる』?


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