ショコラ SideStory

 そうして時刻は十二時を過ぎる。
ランチ目当てのお客さんがチラホラと来る中、背の高いイケメンサラリーマンが入ってきた。

 見たことある、この人。良く娘さんらしき女の子とケーキを買いに来る人だ。
確か、まだケーキ販売をする前から、誕生日ケーキを作って欲しいってごねてたのもこの人だったような。名前は、……えっと葉山さんだったかな。


「いらっしゃいませ」

「やあ、こんにちは。コレ可愛いね」


彼はそのアイシングクッキーの見本を見ながら、私を手招きして言う。
かなり食いついていそうだけど、ここはゴリ押しするべきか? 


「クッキーのアイシングなんです。文字入れも出来ますよ」

「今日はケーキを頼むつもりだったんだけど。これもいいなぁ」


顎をさすりながらブツブツとつぶやいている。

イケメンって悩んでいても格好つくからいいわね。宗司さんだとすっごく情けない感じに見えるのに。

……親父よりは少し若いくらいかなぁ。お嬢さんは小学生くらいだったと思うけど、この人はあんまり世帯じみてない。独身男性って言われても全く違和感ないわ。


「……マスターいる? 今は忙しいかな」

「ちょっとお待ちください?」


注文なら私にしてもらってもいいんだけどな。今は昼時でバタバタしてるし。
そう思ったけど、名指しで言われたら呼ばないわけにもいかないし。

親父に声をかけると、若干イライラした風に店に出てきた。

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