ショコラ SideStory
*
そんなある日、事件は起こった。
「どういうことなんですか!」
一階まで響くような声に、一瞬店内がざわざわする。
その後も聞き取れないけど、母親らしい人物の怒鳴り声と、子供の泣き声。
そして階段を駆け下りていくような音。
何かあったのは間違いなさそうだ。
「……いいのか?」
マサが、あごで私を促す。
いや、気にはなってるけどさ、こういう時空気も読まずに入っていっていいものか分からない。それに、こっちだって接客中だし。
「ご注文お伺いします」
「ケーキセット、モンブランと紅茶でね。……ねぇ詩子ちゃん、上でなんかあったの?」
「さあ、あたしにはわかりかねます」
常連客で、あたしと宗司さんの関係を知っている人は、心配そうに言ってくるけど。
いやいや、今起こったばかりのこと分かるわけないじゃない?
あたしはエスパーじゃないわよ?
「モンブランと紅茶のセットです」
厨房に注文を告げに入ると、親父も神妙な顔をしていた。
「詩子、上いってやれ」
「え。でも」
「様子見てこい。俺も気になる。店内は俺とマサに任せていいから」
「う、うん」
そう言われて、普段は閉めっぱなしにしている内階段から二階へ登る。鍵を回してこっそり覗いてみても、丁度ホワイトボートが目の前にあってここからじゃ見えない。
でも話し声的には、残った生徒さんの相手をしているようだ。
そんなある日、事件は起こった。
「どういうことなんですか!」
一階まで響くような声に、一瞬店内がざわざわする。
その後も聞き取れないけど、母親らしい人物の怒鳴り声と、子供の泣き声。
そして階段を駆け下りていくような音。
何かあったのは間違いなさそうだ。
「……いいのか?」
マサが、あごで私を促す。
いや、気にはなってるけどさ、こういう時空気も読まずに入っていっていいものか分からない。それに、こっちだって接客中だし。
「ご注文お伺いします」
「ケーキセット、モンブランと紅茶でね。……ねぇ詩子ちゃん、上でなんかあったの?」
「さあ、あたしにはわかりかねます」
常連客で、あたしと宗司さんの関係を知っている人は、心配そうに言ってくるけど。
いやいや、今起こったばかりのこと分かるわけないじゃない?
あたしはエスパーじゃないわよ?
「モンブランと紅茶のセットです」
厨房に注文を告げに入ると、親父も神妙な顔をしていた。
「詩子、上いってやれ」
「え。でも」
「様子見てこい。俺も気になる。店内は俺とマサに任せていいから」
「う、うん」
そう言われて、普段は閉めっぱなしにしている内階段から二階へ登る。鍵を回してこっそり覗いてみても、丁度ホワイトボートが目の前にあってここからじゃ見えない。
でも話し声的には、残った生徒さんの相手をしているようだ。