ショコラ SideStory

 翌日、部屋の掃除も終わってしまうとすることはない。
プリントを作るという仕事は無いこともないけどそれも気が乗らない。

ああ、詩子さんがいないと俺ってダメ人間。

 ベッドに横になりながら、天井を見上げると、詩子さんの顔が思い浮かぶ。
表情豊かな彼女の中でも、今思いつくのはムッとした顔だ。


【いつまでゴロゴロしているの。ちゃんとして】


そう言われているようで、俺はベッドから飛び起きた。
俺を奮い立たせてくれるのは、いつだって彼女だ。


 部屋にいるとついつい寝るかテレビを見るかになるので、思い切って家をでることにした。
たまには塾の掃除でもしよう。いつも詩子さんが『ショコラ』の掃除のついでだと言ってしてくれるけど、人に頼ってばかりじゃダメだ。

 勢いづいて家をでて、電車に乗る。『ショコラ』の最寄り駅までは電車で二駅だ。平日の今の時間は電車もスカスカで、余裕で座って景色を眺められる。
そして、電車を下り駅に降り立って、俺は目を見張って足を止める。


「詩子さん……」


 詩子さんが、帽子を被った背の高い男と歩いている。よくよく見ると、あれはマサくんだ。二人はなにかを話しながら、時々どつきあいをして、それでも笑いながら歩いて行く。
買い物でも行ってきたのか、詩子さんの手には紙袋が二つ。マサくんの方は紙袋を一つ持っていた。

二人は俺には気づかない。ほんの二メートル先を通り過ぎて行くのに、全く脇目もふらずに話しながら、商店街の方へと歩いて行った。


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