ショコラ SideStory


「……だって、マサくんには彼女がいるんだろ?」


だけど。
詩子さんの傍にいたら、誰だって彼女が好きになる。
俺の方を向いていてくれたのが、奇跡みたいなものだったんだ。

握っていた拳から、力が抜けた。

用事って、マサくんと出かけることだったのか。

彼を優先された悔しさも少しはある。
でも本当に一番悔しいのは。

きっと彼の方がお似合いに見えるのだろう。
そんな風に思ってしまう自分だった。







 なんとなく塾に行く気力も削げて、俺は戻り方向の電車に乗り込んだ。

メシ、たべなきゃな。
そう思って、どこかに寄ろうか考える。

動き出したのも遅かったから、もう夕方だ。

通りにある店を見ながらブラブラ歩いていると、ラーメン店に行列ができているのを見つけた。
先日、テレビで餃子が絶品だと放送されていたところだ。


「餃子、詩子さん喜びそうだよな……」


近くだから今度連れて行こうって、あのテレビを見た時に思ったんだった。

冷蔵庫に入れていたビールも、詩子さんなら美味しそうに飲むのにな。
ナスの漬物と、枝豆があるとゴキゲンで、今時期ならきっと冷奴とかも好きだろう。
しょうがとネギを添えたら、歓声を上げたりするのかな。


「詩子さんと食いたかったな」


毎日、一人で食事をすることに、すっかり慣れたはずだったのに。
週に一度、彼女と食べる夕飯を、俺はこんなに楽しみにしていたのか。

疲れた。
何もしていないけど、すごく疲れた。


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