ショコラ SideStory
「宗司さん、行こ」
「あ、うん」
マスターとマサくんに頭を下げて、俺は詩子さんと共に店を出る。
数歩歩くともう汗が出てきそうなほど暑くて、悩んだ末に俺は二階の塾に行こうかと誘った。炎天下の外で話すより、クーラーの効いている場所の方がいいだろう。
詩子さんは頷くと、外階段を上る俺についてくる。開けた瞬間もわっとした空気が出てきたが、冷房をつけると次第に涼しくなってきた。
「ごめん、お茶も無いけど」
「そんなの要らないわよ。それより。……なんでメールに返事くれないの?」
「え? 朝したけど。返事くれないのは詩子さんの方じゃ……」
「朝にメールなんてもらってないわよ」
「え? あれ」
慌てて、携帯を確認する。
俺が出したと思っていたメールは、未送信ボックスの中に収まっている。
なんだ、送信ミス?
「……なんだ。送れて無かったんだ」
急に力が抜けて、俺は床に座った。詩子さんは小首を傾げながら近寄ってくる。
なんだか猫みたいな仕草だ。
「返事、くれてたの?」
「うん。送信ミスみたい。ごめん。昨日は寝ちゃってて気づかなかったんだ。それで朝慌てて出したつもりだったんだけど。俺こそ、詩子さんから返事なかったから、怒らせたかと思った」
「そんなに簡単に怒らないわ」
そう言ってるその顔が、既にむくれているのだけど。どうしたら機嫌が治るかな。
近寄ってくる詩子さんの顔をじっくり見てると、目尻に涙の痕がある。そういえば、さっきマスターと泣いた泣いてないで一悶着していたみたいだな。