ショコラ SideStory


「宗司さん」


あたしはぎゅっと抱きしめ返す。
優しくなんかない、締め付けるような強い力で。


あたしだったら、そんな風には彼を困らせない。

伝えるなら自分の口だし、他の誰の視線もないところで、正々堂々とするわよ。

でなきゃ、傷つくのは彼だもの。


「どうしたの、詩子さん」


衝動的だったと言われればそうだろう。

だけど、この時あたしは、守れるものならもう一生あたしがそばに居て彼を守ろうって思った。

変な傷つけ方されても、あたしが癒してあげたいってそんなふうに。


「……あたしと結婚しよ?」


宗司さんの動きが止まる。
あたしの肩を掴んで覗きこんでくるその顔は、晴天の霹靂といった感じの様子で。


「は? ……え?」


そうね。
あたしもびっくりよ。

こんな気持ちになるなんて。


だけど、
堪え切れないくらいに溢れ出す感情に嘘をつく必要なんてない。


「結婚しようよ」


あたし、もっとあなたの傍にいたいの。








【Fin.】
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