ショコラ SideStory
店から徒歩で家まで歩く。遠くからでも窓から明かりが漏れているのがわかった。
一人になりたい日に限って、母さんが帰ってきているらしい。
それにしても、帰ったらカーテンを閉めてもらえないだろうか。
変なところズボラなんだから。
「ただいま」
「おかえり、詩子」
部屋着姿の母さんは、どうやら夕飯作りに奮闘しているらしい。
あたしは荷物を階段の下において、リビングのカーテンを閉めた。
「詩子、ご飯食べたの? ちょっと味見してよ。ポトフ作ったんだけど」
「ポトフ?」
「そう、和風ポトフ。行きつけの店で出るやつが結構美味しいのよ。寒い時期いいわねって思って真似してみたんだけど」
「へぇ」
母さんは仕事での付き合いも多いから、たくさん店知ってるんだろうなぁ。
ポトフが出る店なんてあんまり聞いたことないけどねぇ。
小皿によそってもらって口に入れると、ごぼうの味がしみてて美味しい。
ポトフって言うからもうちょっとくどいのを想像したけど、これはさっぱりして疲れた時にいいかも。
「美味しい」
「でしょ。たまには妻らしいこともしないとね」
「珍しい事言うわね」
「クリスマス前だから。……隆二くん忙しくなるでしょ」
「ああ」
確かに。この時期は店に泊まりこむことも多い。
親父は毎年、クリスマスには新作のケーキを作るのだ。