ショコラ SideStory

あたしは毎年新しくしなくてもローテーションでいいと思うんだけどね。
しかも、どんなに人気がでても、それを定番商品には持ってこないのも嫌なところだ。

数ヶ月かけて作ったケーキのくせに、十二月二十五日過ぎたら出さないってどんなこだわりなのよ。

普段、ケーキ作りに夢中になる親父を前に不機嫌になる母さんも、なんだか今は嬉しそう。


「珍しく寛大なのね、母さん」

「そうね。クリスマスケーキの意味を知っちゃったからなぁ」


意味……?

不思議に思ってまじまじと見ると、母さんは頬を赤らめて誤魔化すように鼻歌を歌いながらご飯をよそってきた。


「いただきます」

「はいどうぞ」


……母さんに作ってもらうご飯なんて久しぶり。

いつもは仕事が夕方上がりのあたしが作るのが普通だから。

ああ、いいなぁ。
誰かがいる家に帰るのって、結構いいものなんだわ。


「ケーキの意味ってなんなの?」

「んー、ナイショ。でもちょっとだけ教えるなら、あれは隆二くんからのラブレターなのよ」


内緒になってない。

なんだかんだ惚気けたいじゃないのよ、いい年して。


……でも、なんだか羨ましい。

いいよね、年取ったって惚気けたって。
いつまでも恋してるみたいな母さん、カワイイもん。

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