ショコラ SideStory
そうね。結構ところかまわずいちゃついてるようだしね。
娘としてはもうちょっと遠慮してほしいくらいよ。
でも、……そうか、固定観念ね。
確かに、夫婦がべたべたしてるのってあんまり見ないもんなぁ。
認められたからこそ言えなくなる言葉。そんなのもあるのねぇ。
「森宮さんもそんなのあるのかしら」
「さあ。森宮ちゃんはちょっといい子すぎるからね。もうちょっと言いたいこと言えばいいのにって思うけど、……香坂くんの事、好きなんだろうからしょうがないわねぇ」
母さんは最後の一口を食べると、ごちそうさま、と立ち上がった。
「さ、片付けて風呂入ろ。明日も仕事だもの」
「そうね。あたし洗い物してあげるから、母さん入ってきなよ」
「あら、ありがとう。助かるわー」
そのまま、鼻唄を鳴らしながら母さんが自室へと戻っていく。
あたしは、油でべとついた皿とタッパを洗いながら、今日聞いたみんなの言葉を頭のなかで反芻する。
“来てくれた人へのありがとうが伝わるものがいいな”
“流石にもう似合わないもんねぇ”
“男女で温度差が出るもんだろ”
“こんな男で大丈夫かなんて思われたくないし”
“世間的に認められたことで私は逆に不自由になったのかも”
人の心は千差万別だ。
どれを活かすかは、それこそ個人の選択によるものなんだと思うけど。
……森宮さんの気持ち、香坂さんの気持ち、全てを汲んであげれるようなものってなんだろう。