ショコラ SideStory
「分かった。頑張るわ」
「詩子」
「アイシングで親父を認めさせられたら、あたし達のことも放任してくれるんでしょ?」
「う、まあな」
「約束よ。あたし頑張るわ、宗司さん」
「俺も頑張るよ、詩子さん」
昔からずっと親父はうざい父親で、あたしはその支配下の娘。
そんな構図がずっと当たり前で。
あたしは初めて、親父の口から『一人前として扱う』なんて言葉を聞いた。
あたしが親父に自分の力を見せつける。
そんな可能性、考えたことがなくて。
考えただけでワクワクしてきた。
「じゃあとりあえず着替えるから一回帰るわ」
「あ、送るよ。詩子さん」
「宗司! 朝から送り狼になるなよ」
「なるわけ無いでしょ、朝っぱらから」
「いや、俺自信ないです」
「宗司さんも、何馬鹿正直に語ってんのよ。送りなんか要りません!」
怒鳴り声を投げつけて、店を出る。
ずんずん進みつつ、追いかけられないのも寂しくなって振り向くと。
……いた。情けない顔した大好きな人。