ショコラ SideStory
数枚を撮って、カメラを上に向けると写るのは、まっすぐにスイーツに向けられる彼の真剣な眼差し。
それは厳しいながらもとても愛おしそうで、胸の奥で私の面倒くさい部分がじりじりと動き始める。
その指先の作業が終わり振り向いた一瞬、きっと隆二くんの最高の顔が撮れる。
それが分かっているのに、カメラを離せと心が悲鳴を上げる。
彼の視線を生で捕らえられないなんて勿体無い。
だって、やっと私を見てくれる時なのに。
ファインダー越しに隆二くんの顔が動いた。
私の本能は、カメラを離すことを優先した。
だってやっぱり、その眼差しはレンズ越しなんかじゃ嫌だもの。
「どう? 康子さん」
隆二くんが私を見る。
その嬉しそうな顔を見て、間に合ったと思ってしまう私は、カメラマンには向いていないだろう。
「おいしそう、とっても」
精一杯でそういって、こそこそと厨房から退散する。
自分の欲深さと視線を獲得したドキドキでおかしくなりそうだ。