ショコラ SideStory

 それから一年以上を一緒に過ごして分かったのは、彼女がものすごく強引でものすごく肉食だということだ。

容姿が良すぎるってのはいいことばかりでも無いらしく、康子ちゃんは常に男の好奇の視線にさらされていた。

言い寄ってくる男も数知れない。
ただ、その実情は遊び半分で声をかけてくる男が大半で。
彼女はそれを物ともしてない風に笑っては、見目の良い男を選んで付き合いだしたりしていた。


そんな彼女を観察するのは、俺にとってはもう趣味みたいなもんだった。


最初は甲斐甲斐しい男たちは、やがて彼女の強さに負けはじめる。

別れを言い始めるのがどちらからなのかは知らないけど、数ヶ月もすれば終わりになっていた。


「別れたのか?」

「まあね。そこまでの男だったってことよ」


いつもそんな風に笑っていた。


だけど俺は知ってる。

ファインダー越しに見える彼女は、いつだってすがるような目をしているんだ。
彼女が持つ豊かな表情の合間合間に、その瞳は写る。


もっと愛して。


口では言えない願いを、その瞳に映し出している。
だからこそ彼女はあれほどまでに人を惹きつけるんだ。



誰より愛して欲しいと、焦がれた視線を送っているから。

だから男たちは彼女に魅入られる。




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