だってキミが好きだった








《まもなくK駅に到着します。右側の――》







……あぁ、着いてしまう。




懐かしい場所に。




私は再びここに足を踏み入れることになるのか。





ガタン、ガタン、ガタ。




体の揺れは、小さくなっていく。




そして。





キ――。





一瞬体が大きく揺れ、揺れはなくなった。





扉がゆっくりと開いていく。




扉の先には大勢の人。





ここでも多いのか。




ボーッとそう考えながら、私は一歩懐かしい場所へ足を踏み入れる。




心の中では、


イキタクナイ。




そう思っているのに。






足は、進んで行く。






以前と同じように。




一歩、一歩。




何度も人とぶつかりながら出口へ進んで行く。





“OASIS”までの距離はもうあまり無い。



















駅を出て徒歩5分。



今私の目の前にあるのは、木製の可愛らしい扉だ。




そしてその扉にかかってあるプレートには、




【OASIS】




そう書かれてある。






……着いてしまった。



ドキリ、ドキリ。


高鳴る胸の鼓動を沈める様に胸に手を置き、顔を俯かせる。





どうしよう。



久しぶりだ。



久しぶりすぎて緊張する。




本当にどうしよう。




何が“どうしよう”なのか。そんなの全然分からないけど。



緊張してその言葉しか出ない。






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