キス逃げ【短編】

「今日で何回目よ?」

「何回かなぁ~~??」


私は大きく溜め息をつくと、衛のわき腹をグッとつねった。


「いってえぇ!!!」

「今日だけで13回もキスされてんのよ?!しかも、全員違う女の子だなんて……」

私は怒るのも虚しくなり、途中で言葉を終わらせた。

「仕方ないだろ。俺だってしたくてしてる訳じゃないんだから」

そんな事は分かってるわよ。

ただ、あんたを好きな私がそれを見て平然と出来るわけないでしょ。


「……隙が有り過ぎるのよ」

ブツブツ言う私に、腕を絡ませてくる衛。
屈託の無い笑顔で私の顔を覗き込むと

「もう、何で紗柚が怒るんだよ。どうしたら機嫌直るの?」


そんな事……


私達、もう中学生じゃないんだからね。


「知らないっ」

そう言って、絡ませる腕を振りほどきスタスタと歩いた。


衛、全然分かってないんだから。


そんな私を後ろから追いかける衛。

衛のせいじゃないって分かってるんだけど、そんな所見て居たくないんだもん。

「紗柚、ごめんったら」

謝られれば謝られるほど、自分が惨めになる。

「……」

「じゃあ、21のアイス奢るから!!ねっ、チョコミント」

私は急に止まると、衛を睨みながら

「ダブル?」

「へっ?ああ、良いよ。ダブルね」

そう言って、私の肩に手を乗っけてきた。






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