魔法日記


ばりぼりと私がクッキーを食べる音だけが響く。


ここは私のお気に入り。


誰かがここにいたのを見たことが一度もないから、きっと誰もいない。




ごくん。


噛み砕いた欠片を飲み込んで、2枚目に手を伸ばす。



チョコレートチップの盛大に乗ったそれを口に入れようとした時、私が座っているすぐ横の茂みからカリカリと何かを書いているような音が聞こえた。




・・・誰か、いるの?


ついさっき誰もいないと思っていたから凄くびっくりした。



この茂みの向こうに、誰かいるんだ。


驚愕やら恐怖心なんかより好奇心の方が大きかった。



勇気を出してばっと茂みをかき分けると、驚いたようにこっちを凝視している私と同じくらいの、黒髪の少年がいた。


魅せられるほど綺麗なグレーの瞳はこぼれ落ちてしまいそうなほど大きく見開かれている。


いつからいたんだろう。


それに、今はもう春なのに首にマフラーを巻いている。


こんなに暖かいのになんでだろう?







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